ようこそ「Studio die Sonne」へ
快適空間コンサルタントの山内陽子です。
この写真を見て、すぐになんだか判ったアナタ。
なかなかの食いしん坊さんでは?
1つ前の記事でキッチンの引出しについて書いたので、
ついでにもう1つ不思議な物の収納についてです。
これは、私にとっては「使用頻度が低いけど処分出来ないもの」
のひとつ、いや、ふたつ。
左手前にあるのは、「のり巻きの型」なんです。
写真では判りにくいかもしれませんが、本体がV字になっています。これを使って作ったのり巻きは
断面が三角形になるんです。私がまだ新婚の頃にある女性から贈られたもの。
当時、ひょんなことから知り合って、とても仲良くして頂いたんです。
親くらいの年齢(確か彼女のお嬢さんと私は同級生だったと思います)の方だけど、しょっちゅう一緒に遊んでました。近所の気軽なランチに行ったり、自転車でパン屋さんを回ったり、展覧会を一緒に見に行ったり、本を読んだり、音楽を聴いたり、お互いの家を行き来したり、そういうお付き合いを、私がその土地に居る間ずっと続けてくださいました。
結婚したての私にとって、ベテラン主婦の(でも押し付けがましくない)日常は、なんとも魅力的で大人っぽくて憧れでした。
彼女はものすごく料理上手で、料亭のような料理をあっという間に作る方。これは何年経っても真似出来ませんが、おもてなしの基本姿勢は彼女に教わったと言えます。
その彼女がある日、この型を、私の分まで職人さんに注文して作って贈ってくれたんです。
「のり巻きが三角形だと話題になるでしょう?」って。奇をてらわないのり巻きだけど三角というちょっと意外性がある。ここに、彼女のおもてなし精神があるのでしょうね。時々彼女を思い出しながら三角形ののり巻きを作っています。
右の物はまだ新しいのですが、こちらも大切な「型」。
これは、米沢の伝統料理である「塩引き寿司」の専用の型。
数年前に、やはり尊敬する女性からお声がけを頂いて、一緒に大工さんに注文して作って
頂いたもの。
しっかり塩をしたあと、塩出しをして使う紅鮭の押し寿司です。
かつてまだ流通が盛んではなかった頃、海から遠い米沢では生の魚を食べる事は難しかったので
このようにして運ばれて来た物を、ハレの日に大切にごちそうとして食べたのですって。
大きく作ってから切るのではなく、一切れ一切れ、この型で抜くのが特徴。
こうすることで、大切なお米に刃を立てない、米粒を切らないで作るのだとか。
(最近、明らかに「切ったでしょ?」っていう塩引き寿司も見かけますけどね)
そんな話を聞くと、居住まいを正していただきたくなります。
私が無類の食いしん坊だから、かもしれませんが、
食文化を継承して行くこと、とくに土地の味や家庭の味を継承していくことは、
国家にとって、いや、人類にとって(!)、非常に重要な歴史の1ページだと思っています。
私の人生の中で出会った味は、私が責任をもって継承していきたい、
そう思います。
だから、というわけではないですが、塩引き寿司の型は、娘二人のそれぞれにも
持っていて欲しいので3つ注文しました。もちろん、それを継承するかどうか、とか、
この型をこの先の人生でも持ち続けるかどうかは、本人たちにゆだねたいと思いますが。
そもそも、この塩引紅鮭が、手に入りにくいんですもの。
米沢の、魚屋さん、もうちょっと取り扱いをお願いします。