究極のシンプルライフとは?

ようこそ「Studio die Sonne」へ

快適空間コンサルタントの山内陽子です。

 

「究極のシンプル」というのはどういうライフスタイルなのか、と考えた事ありますか?

 

シンプルライフ、

物を減らせば、それが手に入る、

 

・・・という風潮が一人歩きしています。

でも、果たしてそうでしょうか_?


辰巳渚さんの「捨てる!技術」とか、やましたひでこさんの「断捨離」とか、「スーツケース2つ分の持ち物に」と荷物を減らした大原照子さん、「キホンは全捨てです」とサラリとおっしゃるこんまりさん、自ら「物を捨てたい病」というゆるりまいさん、ベストセラーが続くドミニックローホーさん・・・ほか・・・

 

もちろん、みなさんそれぞれに「哲学」をお持ちなのですが、

第一印象だけ見ると「所有するモノが少ない」ことが共通点です。

 

そりゃあもう、管理出来ないほどの物に囲まれてしまったら、

暮らしが回りませんから(時には自宅なのに自分の居場所がなくなりますから)、

そうすると「まず管理出来る量に減らしましょう」ということにはなるのですが、

「減らせないから困るんですよね。」「減らせないのだもの、捨てるなんてさらに困難!」

という声が聞こえてくるのもわかります。

「だけど、減らさないと管理出来ません。」「でも、減らないし」・・・と、無限ループ。

ぐるぐるぐるぐる・・・        

 

人間って、物欲と向き合っていくことは大儀なことです。

そんなの当たり前の事ですよね?

私たちは皆、悟りをひらいたお坊さんじゃありませんから!

(私も、整理収納アドバイザーだけど、同じ人間なので、完璧じゃないのですよー。)


どこからが「物欲がもたらしたモノ」で、どこまでが「必要不可欠なモノ」なのか。

そんなこと、簡単には分りません!

 

 

***

 

最近、これについて、答えを探す手がかりになる出来事がありました。

私たちが家族ぐるみでお付き合いをしている、あるご家族の実話です。

 

このファミリーは、専門性の高いお仕事をしているご夫婦と

お嬢さんがお二人の4人家族+ワンちゃん。

お仕事での世界的な評価も高く、いわゆるセレブリティに数えられると思います。

でも、ぜんぜん鼻にかける事がなく、気さくな人たちです。

気配りとユーモアセンスが抜群で、いつも笑ってばかりです。

本物のセレブってこういう人たちを言うのだと思います。

アメリカの、とある海沿いの都市の閑静な住宅街に、(ハリウッドスターほどではないですが)

びっくりするほど大きい邸宅を構えて暮らしていました。

ハウスツアーという言葉がありますが、最初に案内された時の感想は、「まさにツアー」でした(笑)。

裏庭には林があり、反対側にはプライベートビーチをお持ちでした。

お宅にお邪魔しても「この家に無い物は無いのでは?」と思うほど何でもあって、

広いお家の広い収納にもいっぱいにモノが納まっていました。

キッチンだってプロの厨房のような充実設備♪ご夫婦仲良く手料理でもてなしてくれました。


 

ところが、最近、彼らはこの暮らしを手放した!のです!!!!

 

お嬢さんがお二人とも大学生になって家を離れ、

仕事にお忙しいご夫婦が、「もう大きな家を所有する必要がなくなった」という理由です。

 

さっさと豪邸を手放して、より海のそばに1LDKのお家を手に入れて、

ご夫婦で平日は相変わらず仕事を楽しみ、余暇は夫婦仲良くのんびり楽しく暮らしています。

 

確かにあの家を、あの忙しいご夫婦がメンテナンスするのは並大抵の大変さ

ではないし、お部屋が余って困ると思いますけれど…それにしても、すごくないですか!?

 

物欲と向き合うだけでも大変な、わたしたち人間は、

一旦手に入れた「贅沢」を手放せなくなるほうが普通です。

 

みなさんも多かれ少なかれ、ご経験がおありだと思います。

一旦手にした「モノや権利や便利」はそうそう簡単に手放せなくなるのは、誰しも同じです。

生活を見直すために不要な贅沢部分やムダを削ろうなんて思っても、その線引きが甘くなりがちです。

物欲のエネルギーによって、どれもこれも必要不可欠な事だと錯覚してしまうからです。

  • たくさん
  • 大きい
  • 強い
  • すごい
  • 高い(高価な)
  • 新型・限定 など

    という言葉で形容されるモノの場合、人間には特に支配欲が働くのですよね。
    (私は、この同じ支配欲から戦争も勃発すると思っています。)

これらのモノを所有する事で、人間としての価値が上がったように勘違いしてしまいがち。

 

あるモノを持っていて、誰かに「すごーい!」って褒められたら、注意しましょう。

それは「貴女自身が褒められたのではなくて、モノが褒められた」のです。

なのに、モノを持っている自分を褒められて嬉しくなるとしたら「勘違い」というものです。

「たくさん、大きい、強い、すごい、高い、新型、限定など」という言葉のつくものほど、こういう

価値のすり替わりが起こりやすくなります。人間の価値とモノの価値が分離出来なくなってしまいます。

 

そしてやがて、

所有しているモノを手放すことが、

自分自身の価値を手放すかのごとく

錯覚してしまうのではないでしょうか。

 

ですから、彼らの潔い選択を聞いた時には、

あれだけの贅沢な暮らしをなぜ!?と、そりゃあビックリしました。

しばらく口が開いたまま返事が出来ないほど驚きました。

 

さらに、そのためには、一体あれだけの量のモノを、

1LDKに納まるようにするためにどのようにして

取捨選択したのでしょうか。

 

彼らのライフスタイルは、

全くモノによる支配を受けていないのです。

 

まず、彼らが描くライフスタイルがあり、

それがしっかりした軸となり、

その上でモノが選ばれ、

選ばれた物が使われていた

 

と、いうことでしょう。

 

お片づけのリバウンドがおこりやすいのは、「使った物をもとの場所に戻せない」というのも

大きな原因ですが、

 

「自分と分離出来ていないものを無理に捨てるからリバウンドする」

のだ、ということにもっと目を向けないといけません。

 

絶対的な価値観を、まだ「モノ」にゆだねて、

生き方そのものが「モノ」に癒着しているうちは、

ムリに手放してしまうと、喪失感でいっぱいになります。

「モノと自分が分離出来ていない」ことが原因で、

モノを失う事により自分自身も失いそうに

なってしまいます。

 

モノを手放すと、新しい未来が開けてくるというのも事実ではあるのですが、

まずその前に「モノと自分」を分離しましょう。

 

だから、モノを片づけてから新しい生活をするのではなくて、

自分の生き方を思い描く事が先だと思います。

 

こういう風に生きたくて、

こういう風に暮らしたくて、

こういう風な場所がいいから、

こういう風な住まいを作る。

そのために、

コレが私の持つべきモノ

 

という順序で考えていければ、と思います。

 

究極のシンプルライフとは、

自分のライフスタイルを明確にすること、

なのですね。

 

信じがたいほど大規模にそれを実行し、証明し、私に新しい気付きを与えてくれた

勇気ある二人に心からの感謝をおくります。